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10,000件記念インタビュー

  OPERAの収録文献が平成28年4月7日に10,000件を超えました!
  10,000件目は、"Hiroshi Matsubara, Shouhei Suzuki and Shun Hirano An ab initio and DFT Study of the Autoxidation of THF and THP (THFとTHPの自動酸化に関するab-initio法およびDFT法による考察). Organic & Biomolecular Chemistry, 2015 (13), pp.4686-4692"でした。
  これを記念して、著者の一人である、理学系研究科の松原先生にお話を伺いました。


  図書館:先生の研究分野について教えてください。

  松原:研究分野は化学です。化学の中の有機化学です。その中でも、環境にやさしい反応の方法を研究しています。
  もう一つの柱として、反応がどのように起こるのかという機構(メカニズム)について研究しています。計算機を使い、量子化学計算を用いて、反応がどのようにして起こるのかを、研究しています。
  まず、「環境にやさしい反応」というのは、有機化学の反応はふつう石油(有機溶剤)のなかで反応させるのですが、そうではなく、水の中で反応させられないか、または、非常に高温でしか反応が起きなかったり特別な装置が必要だったりする反応が簡単な器具、例えば試験管1本でできないか、ということです。
  これは、一番下の層がフッ素を含んだ液体、真ん中が硫酸銅で着色した水、一番上の層がトルエンという有機溶剤の一種です。振ると一旦は混ざりますがしばらくするときっちり3層に分かれるんですね。なぜ分離するか、ちょっと理屈は難しいのですが、フッ素の溶媒は水にも油にも溶けないので、分かれるんですね。この性質を利用して、フッ素の化合物は水をはじくスプレーや油をはじくテフロン加工のフライパンに使われています。
  このフッ素の溶媒、水とは混ざらないんですが、油とは熱を加えると混ざるんですね。加熱すると溶け、冷やすと分離します。私が作っているのはこの一番下の層の性質を持った触媒や反応剤ですので、加熱すると溶け、原料の有機物と混ざって、反応が起こります。反応が起こった後に冷やすと分離しますので、できた化合物だけ取り出せる、ということです。触媒などを使って新しい反応を探している研究者はたくさんいますが、私の研究が少し違っているのは、触媒は触媒としてそのまま用いるけれども、そこに「分離できる」という性質を加えることによって、反応を簡単にする、という点です。
  エネルギーをあまり使わないとか、有害な物質を使わないとか、後処理が容易、など、広い意味で「環境にやさしい」という化学をグリーンケミストリーといいますが、私の研究はその分野に含まれますね。


   図書館:今回OPERA登録件数が10,000件目となった論文は、どのような論文なのでしょうか。

  松原:この論文はグリーンケミストリーとは直接は関係ないのですが、わたしの研究のもう1本の柱である、反応の機構(メカニズム)について計算機を使って調べたものです。
  有機溶剤のひとつにエーテルという化合物があります。エーテルというのは酸素の両側に炭素がついている化合物なのですが、分子の形が五角形のものがTHF、六角形がTHPと呼ばれ、どちらも溶剤です。よく使われるのは、THFですが、空気中においておくとすぐ爆発性の過酸化物を生成してしまうという問題があります。高性能の溶剤ですが、そういう面で注意が必要です。一方、THPにはその爆発性の過酸化物がほとんどできないことがわかりました。そのため、ある企業の方がTHPを売り込みたいとのことだったのですが、なぜTHF(五角形)が、THP(六角形)になっただけで酸化反応がほとんど起こらないのかわからないので、調べてほしいとの依頼をされたのです。そこで、原因を計算機を使って調べることにしました。
  ところが、計算しても反応性に差がなく、原因はわからない、ということになってしまい、計算結果はお蔵入りになりました。
  それからしばらく経ったあと、なぜ差が出なかったのかを改めて考えてみたところ、それまでは、THFもTHPも過酸化物が生成される2つのプロセスのうちのひとつ(こちらが主要なプロセスと考えていました)に着目して計算を行っていましたが、研究室の学生との雑談から、無視できると考えていたもうひとつのプロセスに原因があるのではないかということになり、こちらのプロセスを計算したところ反応性に差があることが見つかったのです。
  最初は企業の方からの依頼で始まった研究だったのですが、その後4年以上の年月を経て、ひとつの結果を得ることができました。その結果と過程をまとめたのがこの論文です。自分が着目していたところとは、まったく違うところから、答えが見つかったということもあり、非常に苦労した末にまとまった論文でもあります。


   図書館:今後のご研究について、どのような方向に進めていかれるのか教えてください。

  松原:やはり世の中の趨勢として「グリーンケミストリー」というテーマは大切ですので、それに沿って「環境にやさしい反応」の探索を進めていきたいと思います。
  さらに、「計算」は現在、「現象を理解するためのもの」と認識されていますが、「計算」で何かを提案できないか、というところに着目しています。
  たとえば、こういう反応を使えば、あるいはこういう触媒を使えば、いままでいかなかった反応がうまくいくよ、といった計算が実験に先行するような提案をしたいと思っています。
  それから、計算化学の研究者で実験もしている方というのはほとんどおられません。一方で、実験をしている研究者で計算もしている方はおられるのですが、計算がうまくいかないと、そこで計算をあきらめてしまう方が多いんですね。だからこそ、どちらもできる、という長所を生かして研究を進めたいと思っています。


   図書館:オープンアクセスについて、ご意見、ご感想があればお聞かせください。

  松原:今はRSCやエルゼビアの電子ジャーナルパッケージを府大で購入しているので、ストレスなく使えていますが、購読していないものは図書館のILLサービスを利用して取り寄せたりと入手に手間がかかります。そういうことを勘案すると、研究のスピードという面でも、オープンアクセスが進むといいなという気持ちもあります。雑誌がオープンアクセスだから投稿する、ということは(今のところ)ありませんね。
  高価なEJパッケージに掲載された論文ですと、東欧やインドの研究者の方から、別刷を送ってほしいという問い合わせがくることもあります。オープンアクセスというのは、そういった国の研究者の方にとってもよい取り組みだと思っています。オープンアクセスの有難さというのは、何らかの事情で購読ができていない人にしかわからないと思いますね。


   図書館:「大阪府立大学学術情報リポジトリOPERA」について、ご意見・ご感想をお願いいたします。

  松原:学内でリポジトリの存在自体が認知されているか?というのが疑問ですね。出版社から最終稿で返ってきたものをよくみると「リポジトリにあげる際にはどうしたらいいのか」ということが書いてあることが多いですが、私も今まではあまり読んだこともなかったです。どちらかといえば、自分の論文といえども、著作権は出版社に移っているので余計なこと(リポジトリに上げることも含むのかな?)をして大変なことになるほうが問題だ、という認識のほうが強かったです。


   図書館:認知してもらうためには、どういう方法が有効なのでしょうか。

  松原:やはり現在は広報不足ということになるんでしょうね。広報したらしたで、たくさんいろんな要望が来て大変かもしれませんが(笑)。でもそのあたりがわかるといいと思います。

  図書館:そういったご意見はほかの先生からもいただいたことがありますので、リポジトリへの登録についてのFAQを先日Webサイトにアップしました。せっかく、リポジトリにあげても良いと思ってくださる先生がいらっしゃるのなら、よりイメージしていただきやすい方法で、お伝えできればと思います。


  図書館:では最後に、図書館に期待していることがあれば教えてください。

  松原:期待、というか直してほしいところが1点ありまして、理系JCの扉がすごい風圧で閉まるのが何とかならないかと…(笑)。
  3年生の学生を連れて、文献検索の一環として、理系JCの中から文献を探しに行って、ということをしていたのですが、みんな扉がすごい勢いで閉まるのでびっくりしてしまうんですよね。それと、図書館に来れば、「こんな風に相談に乗ってもらえるんだよ」ということが学生に伝われば良いと思います。最近の学生はなんでもネットで検索して終わり、ということが多いので、もう少し専門的な、司書の方の情報の取り方、というのを教えてもらえるといいなと思います。


  図書館:ほかには如何ですか?

  松原:文献の取り寄せなども非常に迅速にしていただいてとても感謝しています。ないと思って依頼したものが学内にあったり、オープンアクセスで読めたり、ということも教えていただけるので、非常に助かっています。ジャーナルの名前が年代によって違うなど書誌情報が変わることが多いのですが、把握できていないことも多いので、それを教えてもらえるのが大変ありがたいです。


  図書館:松原先生、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

  OPERAの登録論文数がおかげさまで、10,000件を超えました。ありがとうございます。比例してアクセス数も伸びていっています。今後とも、教育研究成果をより多くの人々へお届けするため、論文等をOPERAへご登録いただきたいと思います。

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